「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」



その後も宇留野さんは、どうしてだか、何かにつけて私に構う。その都度、適当にあしらってはみるけど、とにかくしつこくて、はっきり言って、うっとうしい。



歓迎会から一週間が過ぎようとしていたある日。

その日も、看護師さんと清拭(せいしき)に回っているうちに、午前中はあっという間に終わった。

早休憩の看護師さんたちが、病棟内にある休憩室にぞろぞろと向かう。看護助手の今日のリーダーに、「米山さんも早休憩で」と言われていたので、私もそれに続いた。


いつものように、社員食堂へ向かう人と、休憩室に残ってお弁当を食べる人に分かれた。私は後者だ。日勤の看護師さんたちと何気ない会話を交わしながら、持参したお弁当を食べた。

丁度食べ終わる頃、食堂組が戻って来て、休憩室はたちまち賑やかしくなった。私は端っこに席を詰めて、大人しくしていたのだけど、若い女性看護師の早川さんが不意に、

「そういえば、先週の歓迎会で、米山さんの旦那さんの写メ見せてもらったって聞きました。私も見たいです」

と言い出した。

「え? そんな……みんなに見せびらかすほどいいもんじゃない……ですけど」

「いいもんですよぉ。私はすっごく見たいです」

と、テーブルを挟んで向かいに座っている早川さんは、こちらに身を乗り出してきた。しぶしぶ鞄からスマートホンを取り出して、歓迎会で皆に見せたのと同じ浩平の写真を画面に表示し、早川さんに渡した。それを目にするなり早川さんは、

「えっ? うそ! なんか意外」

と、わざとらしく驚いて見せた。浩平の顔がイケてないことは、もう既に聞き知っていたのだと確信する。絶対に『意外』じゃなかったはずだ。


「そうですか?」

と曖昧に返して、早々にスマートホンを返して貰おうと、右手を早川さんに向かって差し出しした。けれど、早川さんの隣に座っていた向山さんが、

「私にも見せて」

なんて言うもんだから、早川さんは易々とそれを隣に回してしまう。