「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」

もう一台の階表示を食い入るように見つめた。最上階の10階から、ようやく下りはじめたところだった。

「速く……」

無意識に呟いていた。宇留野さんが静かになったので、やっと行ってくれたかと背後を振り返れば、変わらずそこに聳え立っていた。

「まだ居た」

思わず顔を顰めてしまう。それを見下げた宇留野さんは、何が可笑しいのか、またくつくつ笑い出した。

待ちに待ったエレベーターが5階に到着。扉が開く。今度は誰も乗っていない。そそくさとワゴンを引いて乗り込んだ。すぐに『閉』マークのボタンを連打。もったいつけるようにゆっくりと閉まる扉がもどかしい。

「いってらっしゃい」

そう声を掛けられ、改めて宇留野さんを見た。すらっとした長身に白衣が似合っている。大き目のスポーティなリュックを片方の肩から提げている姿も様になっている。

まるでモデルさんみたいに格好いいじゃないの。腹立つわ。

扉が完全に閉まった。視界が閉ざされた瞬間、ほっと胸を撫で下ろした。

宇留野さんって、あんな人だったっけ? そんな疑問が脳裏に渦巻く。無駄口を叩かない無口な人っていう印象だったのに。私の目は節穴だったってことか。