「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」

「離れてください」

宇留野さんの下腹を、肘で軽く小突いてみる。

「嫌です」

「どうしてですか? 仕事しなくていいんですか?」

「まだ勤務時間前」

「でも皆さん、もう、ばりばり仕事してますよ」

「皆さんは皆さん。俺は俺」

「じゃあ、仕事しなくてもいいですから、あっち行ってください」

「なんで? エレベーター来るまで、一緒に待っててあげようと思ったのに」

「頼んでません」

「『頼んでません』!」

私の真似をしているつもりなのか、怒った顔で同じ言葉を繰り返した後、宇留野さんはクツクツ笑い出した。

「私なんかをからかって、何がそんなに楽しいんですか?」

「楽しい、すごく。あっこれ倒置法って言ってね、『楽しい』を強調してるわけ」

「私は楽しくないです」

倒置法云々はスルー。

「あっそ」

「『あっそ』、じゃなくて……」

エレベーターのドアがようやく開いた。けれど、その四角いスペース一杯にベッドが占拠しており、一緒に乗っていた二人の看護師さんが、私に向かって申し訳なさそうに揃って頭を下げた。私も会釈を返す。上手く笑えていたかどうかはわからない。

無情にも、静かに扉は閉じた。その瞬間、「もおー!」と、思わず地団太を踏んでしまう。

宇留野さんが、ふっと笑い声を漏らし、

「病棟エレベーターあるある」

ぼそりと呟く。どこか嬉しそうに聞こえたから、むっとする。