腕時計に視線を落とせば、時刻は午後8時15分。確か歓迎会は9時までだったはず。ラストオーダーは多分、8時半頃だ。それまでには戻ろう、そう自分に言い聞かせて、目の前の通りを行き交う車にぼんやりと視線をやった。
と、入口の自動ドアが開閉する音が聞こえ、人が出て来る気配を感じた。何気なく顔を上げれば、その人と目があった。
「あっ……」
無意識に小さく声を漏らしていた。
私を目にしたその人も、驚いたようにほんの少し目を見開いた。煙草のソフトケースを手にし、そこから飛び出た一本を口にくわえた状態で、固まったように動きを止めている。
看護師の宇留野さんだ。歳は多分、私と同じぐらい。仕事中、無駄話は一切しないし笑わない。近寄りがたい雰囲気を纏っていて、年配の看護師さんたちですら、彼のことを恐れているような印象を受ける。
でも、患者さんの前で見せる笑顔は極上。元々の顔の造りがいいからだろうけど。
と、入口の自動ドアが開閉する音が聞こえ、人が出て来る気配を感じた。何気なく顔を上げれば、その人と目があった。
「あっ……」
無意識に小さく声を漏らしていた。
私を目にしたその人も、驚いたようにほんの少し目を見開いた。煙草のソフトケースを手にし、そこから飛び出た一本を口にくわえた状態で、固まったように動きを止めている。
看護師の宇留野さんだ。歳は多分、私と同じぐらい。仕事中、無駄話は一切しないし笑わない。近寄りがたい雰囲気を纏っていて、年配の看護師さんたちですら、彼のことを恐れているような印象を受ける。
でも、患者さんの前で見せる笑顔は極上。元々の顔の造りがいいからだろうけど。



