「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」

心なしか苛立った口調で返し、浩平は立ち上がった。そのまま冷蔵庫へと向かい、中から缶ビールを取り出して戻って来た。

再び腰を下ろした浩平が、手にした缶のプルタブを起こせば、プシュッと空気の抜ける音が小さく鳴った。


「結局、どうするかなんて自分で決めるしかねぇだろ? そこで働いてんのは俺じゃなくて杏奈なんだし。選択肢は二つだ。複雑な問題でもねぇし、それぐらい自分で考えろよ」

「簡単に言わないでよ」

選択肢の数が少なければ簡単に決断できるの? いやいや、物事ってそんなに単純じゃないはず。


「あっ……。二つじゃない、三つだ」

浩平は缶ビールを口元まで運ぶも、それを口に含む前に、思い出したように言い足した。


「三つ?」

一つは看護師さんに頼まれても断る。二つ目は、花村さんに『看護師さんに頼まれたら断れない』と伝える。で、三つ目は……? 全く想像がつかなくて、浩平の顔をまじまじと見た。


「そう、三つ。まぁ最後の切り札だけど――

子どもつくって仕事辞める」

言って浩平は、ニッと悪戯っぽく笑った。