「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」

「行きたくない」

ぼそり、本音をこぼした。


「杏奈のために、職場の人たちがわざわざやってくれるんだろ?」

「でも、行きたくない」

「何? 駄々っ子? お前、いくつだよ?」

浩平は、私の陰鬱な気持ちに気付いているのに、敢えて冗談っぽく返して笑い飛ばす。


「今年で三十路」

「ごめん、知ってる。今のは、そこそこ大人だよね? って話で……」

「苦手な人がいるんだよね」

「杏奈さん、俺の話聞いてますか?」

「聞いてる。でね、その苦手な人ってのはさ、」

花村さんについて、掻い摘んで話した。半ば一方的に。浩平ならきっと、的確なアドバイスをくれるはずだって確信していたから。


黙々と箸を進めながら聞いていた浩平から返ってきたのは、

「じゃあ、看護師に頼まれたら断るしかねぇだろ」

在り来たりで素っ気ない答え。

それが出来ないから悩んでんじゃん、と腹が立った。期待した分、残念度がハンパない。


「そんなのわかってるよ! だけど、断れないから困ってんのっ。酷いよ浩平、わかってて言ってるでしょ? なんでそんな意地悪なの?」

「どうして俺が怒られてんの?」

浩平は動きをピタリと止めて、私を真っ直ぐ見詰めた。その顔に不満の色が滲む。