「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」



正式に異動が決まったのは、その二週間後。そして更に二週間後の六月一日付で、とうとう私は本院へ異動となった。

5階、循環器呼吸器内科病棟。特養とは業務内容がほとんど違うと言っても過言ではなく。

仕事とスタッフの名前をひたすら必死に覚える日々。瞬く間に時は流れ、気付けば既に、6月も終わろうとしていた。

梅雨に入った曇天を見上げ、そのくすんだ灰色が自分の心の色に似ていると思った。



指導してくれたのは、花村さんという年配の女性。年配とは言っても、細身の小柄で、実年齢よりも随分若く見える可愛らしい人だった。

物言いもハッキリしているし、手際よく、さくさくと業務をこなしていく。けれど、「それは看護師さんの仕事だから」が口癖だった。


看護師さんに頼まれて、清拭の補助に入っていたりすると、大概、病棟中に響き渡るような大声で名前を呼ばれる。そして、

「米山さん、何度言えばわかるの? エント(退院)されたらすぐ部屋の掃除しないと。うちはいつも満床なんだから。今日も午後一で入院あるのよ?」

などなど。厳しく指導を受けるのであった。