「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」

「薬師丸さん、離床センサー貸してくんない?」

背後から声を掛けられ振り返れば、3Fの東郷くん。物腰柔らかな、感じの良い好青年で、確か、私と同い年。



「ああ……一個、使ってないのがあったはず」

言いながら、リネン庫へ向かった。



トイレの前を通りがかった時、丁度、扉が開いて中から車椅子を押しながら米山が出て来た。


「小春さん、おはよう」


「おはようございます」

車椅子に腰掛けた小春さんは、丁寧に頭を下げながらにこやかに挨拶を返してくれた。



相変わらずの仏頂面で、怪訝そうな視線を私、東郷くん、私と一往復させて、

「何?」

と短く尋ねる米山。



「あんたって、どうしていつも片言なのよ」

思わず不満を口にしたけど、そんなの当然のようにスルーして、今度は東郷くんに向かって「何?」と、再び拙い片言で問う。