「ねぇ米山くん、どうしてそんなに不細工なの?」

「社会ってそういうもんだろ? 正社員で働くって、そういうことだろ?」

「そんなことないよ。こんなの理不尽過ぎる!」

ムキになって言い返した。

浩平だけは私の味方をしてくれるって思ったのに……。裏切られた気がしてショックだった。


浩平は肩を小さく上下させて、ふうと一つ息を吐く。それから困ったように微笑んで、穏やかに、私を諭すような口調で言った。

「俺たち社員は、言ってみたら組織の駒の一つだろ? その駒を、組織が都合のいいように動かすのは当然だろ? それのどこが理不尽?」


何も言い返せなかった。

浩平はこんな風に時々、隙のない正論で私を説き伏せる。

言ってること、頭では理解できるけど、納得なんかできない。正論で感情がコントロールできるほど、私はデキた人間じゃないから仕方がない。


むすっと膨れたまま黙り込んでいると、浩平は呆れたような溜息を吐いた。

「わかった、俺が異動願い出すわ。そんで全て解決、だろ?」

何でもないことのようにサラリと言って、ニッと笑って見せた。


どうしよう……。私が駄々をこねるから、浩平自ら組織の犠牲になるなんて言い出しちゃった。

顔は笑っているけど、内心はどうだかわからないよ、これ。