杏奈の腕の中で身体を半回転させ、その華奢な背中をそっと抱いた。


ぎゅっと力を込めたけど、柔らかくて細いそれが壊れてしまいそうな気がして、慌てて腕を緩める。



「狡いよ、お前」


「どこが?」

杏奈は俺の腕の中から見上げて言い、小さく唇を尖らせた。



「その可愛さは反則」

くっさいセリフを恥ずかしげもなく吐いて、ニッと笑って見せた。



ふふっと、少女のように屈託なく笑う杏奈はやっぱり愛しくて。

さっきまでの怒りも、自分がパンダ顔であることすらうっかり忘れていた。



「俺にも非はあったし。今後は、セックス後の即寝(そくね)はしない」


約束、と続けて立てた小指を杏奈の目の前に差し出した。彼女は嬉しそうに顔を綻ばせ、それにスルリと自分の小指を絡めてきた。



子どもの頃よくやった『指切りげんまん』。

なのに、妙に艶めかしく感じるのは、独立した意思を持つクララの仕業だろうか。