「うわっ熱!お前やっぱ熱──」
「ない!」
「いやあるだろ!」
「ない!」
「家帰って寝た方が──」
「ないってば!」
「じゃあ何でそんなに赤いし熱いんだよ!」
「知らないよ!」
知らん。知らん。
私は何にも知りませーん。
原因作ってる当の本人はもっと何にも知りませーん。
「な…何怒ってんだよ」
「別に怒ってないよ」
「なんか不機嫌だろ」
「何にもわかってないからだよ」
「は?」
少し先を歩いている私が振り向くと、訳がわからないとでも言いたげな、ちんぷんかんぷんな顔。
「……はぁ……。 まあ、恭ちゃんはそうじゃなきゃね」
このニブニブ恭ちゃんがいつもの恭ちゃんだもん。
ため息をついて笑う私を見ると、まだ理解出来ていない表情のまま
「なんかよくわかんねぇけど…辛かったら保健室行けよ?」
と一言。
「わかったよ。ありがとね」
「おう」
うるさい心臓の音を隠すように笑いかける私と、いつも通りの変わらない笑顔の恭ちゃん。
────どうやらまだまだ
私の想いは、一方通行のようです。



