すると、一度は開きかけた扉が、なぜか再びガチャリと閉まった。



「……?」



不思議に思って振り返ると、



「…夏柑!?」



いつの間にか真後ろに来ていた夏柑の手が、扉を押し戻していた。

そして、夏柑はあたしを見て、



「ばーか。声震えすぎなんだよ。」



と言って、自信満々な笑みを見せた。

不覚にも、その笑顔にドキリとしてしまう。


夏柑は扉についていた手をあたしの頬にもってきて、優しく涙を拭った。



「やっぱり泣いてやがった。そんなに俺が居なくなるのが寂しいのか?」



そう言って意地悪く笑う夏柑すら格好いいと思ってしまうあたしは、相当な重症患者だ。

重症なあたしは、これが最後なんだから、素直になろうと思って、



「…寂しい。」



と、ぽつりと言った。