一瞬なにが起こったかわからなかった。
「春花…」
四季に名前を呼ばれて、ようやく状況を理解した。
「…ちょっ…四季?」
あたしは四季から離れようと力を込めたけど、なかなか腕の中から抜け出せない。
「四季?ふざけてないで離して!」
それでも離れようとしない四季。
なんで?
まるで理由がわからず、混乱しているあたしに、四季は切なそうな声でぽつりぽつりと話し出した。
「僕は…綾瀬家に養子として引き取られてから、ずっと一人だった。」
あたしは何も言わずに、四季の話に耳を傾ける。
「父も母も忙しくて、相手をしてくれなかったからね。…とても寂しかった。」
「うん。わかるよ、その気持ち。」
あたしの時も、両親の態度は冷たかった。
「でも…一人じゃないって分かった。僕には姉がいるって…」
そこまで言うと、四季の腕の力が少し強まった。


