遠くに消えて行った海の足音が、再び大きくなる。

それと比例して、ざわざわとした喋り声も聞こえてきた。



「春花!」



あ…、和樹の声だ。



「意識戻ったって、海が…。よかった。まじで良かった!」



ベッドに寝ているあたしを覗き込む和樹の瞳は、赤く充血していて、今にも涙が溢れそうだった。



「あり…がと。心配…してくれて。」



あたしは、そんな和樹を見て、少し頬を緩ませた。

こんなに心配してくれる人が傍にいるなんて、幸せ者だ。



「綾瀬さん。どこか痛む所はないですか?もちろん、腹部以外で。」



白衣の男性が、あたしにたずねてきた。

たぶん、医者だと思う。



「いいえ、大丈夫です。」


「そうですか。良かった。では、ちょっと失礼。」



白衣の男性は、そう言うと、あたしの下まぶたをグイッとめくったり、脈を計ったりし始めた。