「春花、ヘアピンか何か持ってっか?」
「へ?持ってるけど?……まさか。」
「そのまさかだよ。早くヘアピン貸せ。」
夏柑があたしの前に手を出してきて、催促する。
まじですか…
あたしは、仕方なくポケットにさしてあったヘアピンを、その手に乗せる。
「はぁ…。見つかったらどうすんの?」
「そん時はそん時だ。…っと、開いたぜ。」
カチャリと鍵の開く音が聞こえた。
「夏柑、泥棒に転職すれば?」
その手際の良さに、嫌みったらしくそう言うと、
「んー?そうだな。俺にこなせない仕事なんてねぇし。」
と、持ち前の自信過剰な精神で、サラリとかわされた。
相変わらず、ムカつく!
でも、本当のことだし、言い返せないんだよね。
同級生に一人ぐらいは、いるでしょ?
勉強してなくても、テストで満点とっちゃうような子。
夏柑って、それなんだよね。
天才っていうか、何でも軽々しくこなせて、いっつも涼しい顔してるの。


