暗くて、じめじめしていて、すごーく陰気臭い、大きなマンション。
ここに宮武が…
「入るぞ。お前は、あんま喋るなよ。」
「わかってるよ。」
あたしはそう言うと、夏柑の後に続いて建物の中へと入っていった。
ポストが並ぶ入口周辺は、ゴミやチラシが無造作にバラまかれていて、歩く度にがさがさと音をたてた。
チラリと401号室のポストに目をやったけど、当然のごとく、名前は書かれていなかった。
401号室に限らず、他のポストにも名前は書かれていなかったが、よく考えればそれは当たり前だった。
自分の名前をみすみすさらすマヌケな犯人は、なかなかいないだろう。
入口のポストの横を通り過ぎ、階段で4階まであがる。
幸い、誰かに出くわすこともなく、無事に4階まで行けた。


