しばらく歩いて、大通りから一本はずれた道へ進むと、古びたマンションが連なる集営団地が見えてくる。
ここが、桜木町。
「気をつけろよ。」
夏柑が前を向いたままで、ぼそりと言った。
あたしは、なにも言わずにこくりと頷き、夏柑と同じく、前方から目を離さずにいた。
きちんと前を見据えていないと、突然なにかが現れて、ぐわっ!と持っていかれそうな程、薄暗くて不気味で、人が居るはずなのに人気がなく、やけに静かで怖かった。
それに、あちこちのコンクリートは落書きだらけだし、所々壊れていたり、血のような赤い点々がついていたりする。
(本物の血じゃないことを願うしかない。)
まったく、噂に違わぬ治安の悪さぶりだ。
こんな所、回れ右をして、さっさとおさらばしたいよ。
でも、宮武の情報をつかむまでは…!
そう意気込み、夏柑から離れないように、緊張している体を動かして、早歩きでついて行った。


