「おい。早くしろよな。」
あたしの頭がパンク寸前なのを知ってか知らずか、ドアの向こうから夏柑が急かす声が聞こえた。
「わ、わわ分かってるよ!」
考えを中断させて、わたわたとしながら、急いで着替えを終わらせた。
「まだかよ?」
「もう着替えた!制服、適当に置いといていい?」
「おう。そこら辺置いとけ。」
「はいはい。ったく、夏柑め。考え中だったのに。だいたい、夏柑が男装しろ、なんて言うから…。」
「なんか言ったか?」
うわっ…
チョー地獄耳。
「なんでもない!」
あたしは、まともに考える暇もなく、夏柑への怒りが増しただけだった。
結局、この時のあたしは、答えを出すことはできなくて……
後々、そのせいで、これ以上にテンパって、頭が混乱する事態になるとは思ってもみなかった。
とりあえず、現在最も重要な問題を解決すべく、あたしは夏柑の服を着て、桜木町へと向かった。


