すると夏柑は、ハァーと深いため息をついて、諦めたように、
「しょうがねーな。」
と、言った。
どうやら、あたしの粘り勝ちみたい。
「やったー!ありがとう、夏柑!」
しかし、夏柑は続けた。
「ただし!」
その言葉に、あたしの顔が固まる。
「へ?ただし…なに?」
夏柑のことだから、とんでもないことを条件にするに決まってる。
あたしは固唾を呑んで、次の言葉を待った。
「ただし、お前男装しろよ?」
「…はい!?男装!?誰が?」
「春花が。」
「なんで!?」
「念のためだよ。春花も一応女だからな。」
「一応って…」
「桜木町は、まじで物騒だからな。春花みたいな男女でも、もしもってことがあんだろ?」
失礼な奴!
「まぁ、男装ぐらいならいいけど…。男物の服なんて持ってないよ?」
「俺の服、貸してやるよ。」
成る程。
その手があったか。


