{人を、初めて殺してしまったのは、いつのことでしょうか。

 まだ幼かった私は、目の前で倒れ伏している男を、不思議に思いました。

 投げたナイフが男の胸にささったとき・・・。

 私にはただ勝ったという現実しか見えていませんでした。

 苦しそうにうめき、地面でもがく男を見つめ、私は笑いました。
 
 なんて弱いのだろう、と。

 弱い者は惨めだと、そう思いました。

 弱い者は汚いと、そう思いました。

 弱い者はあってはならないと、そう思いました。

 弱い者は強くしなければと、そう思いました。

 だから私は教師になったのです。


 
 しかし、初めて私の生徒が殺されるのを見たとき。

 殺した時の快感はありませんでした。

 ただ、溢れる涙が止まりませんでした。

 彼女の体中から溢れる血を見たとき、笑いなど微塵も起きませんでした。

 自分の生徒が殺されるのは、耐えられなかった。

 私が男を殺したとき、同じ気持ちだった者がいたと知ると、

 自分がとても醜く思えました。

 もう二度と、生徒は殺させない、殺さない。

 

 私の死がこのような死であったことを、私は誇りに思います。


 柚希。

 他のSSSランクは、すでに始末してあります。

 金によって三津谷に買収されたあのものらを、私は憎んでいます。

 
 あなたが本気で香我美七海を助けたいというのなら。

 私はあまんじて、それに利用されましょう。

  茂呂美智子}