視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~


口をつぐんだ私を不思議に思ったのか、長田さんは遠慮がちに、
『…どうしたんだい?』
と、問いかける。

私は、俯きながら泣きそうな声で、
『…知らないんです。』
と、そう答える事しか出来なかった…。


「分かりました。それは、こちらで調べさせて頂くね?いいかな?」



「…はい。…すみません。」


そんな私の異変に気付いたのか、大輔は私の手を優しく包んで、握り締める。


「記憶が無いんだ…。仕方がないよ…。」


と、項垂れた私を慰めるように言ったんだ。