視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~


歩み寄る私に気付いた大輔は、目を見開き私に抱き付いてきた…。

私は、この血が大輔の物かを確認するかの様に、大輔の身体に手を這わせた。



どこにも傷らしき物はない…
良かった…


そう安堵していた私に、大輔は口を開いた。



「良かった…良かった…セツっっ!!」



「…えっ?」


大輔は、私の事を”セツ”と呼んだんだ。


大輔…なんで?
私は”香歩”だよ…?


大輔は、私を抱き締める腕に力を込めた。


「私が殺された後、君もあんな事に…。」


「…大輔?…なに、言ってるの?」


「あんな…何度も何度も…。でも、君は今、こうして生きている…。」


大輔と噛み合わない会話に、私は困惑するしかなかった…。