視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~




「…もう…どうにも出来ないのかな…?」


俯きながら独り言の様に呟く私に、長田さんは何も言わなかった。
言えなかったんだと思う。
長田さん自身にも、手掛かりとなる物が何一つなかったんだから…。


大輔…香里奈…おばさん…
私がそっちに行けば、戻れるのかな…?
【黒い靄】は『帰っておいで』って、
そう言ってた…
私がそっちに帰れば、皆が戻れるなら私…


そう考えを巡らせながら、手にした数学ノートをぺらぺらと捲る。

最後の授業で書いたであろうページの角に、小さく何かが書かれてある事に気付いた。


そこには…



”香歩が好き。伝わればいいのに。”



そう書かれてあったんだ…。