視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~




--- ガタンッ!!


驚き後退りした斉藤刑事は、部屋の戸に背中を打ち付けた後その場に座り込んだ。

放心状態のまま、言葉にならない声を出すばかり。




「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ。」




黒い靄は、ゆっくりと色濃さを増しながら私達の方に近付いてきた…。




恐怖で呼吸が早くなり、息苦しさを増していく。




突然、私に抱き締められていた香里奈が、私の腕からすり抜けてベッドの上に立ち上がった。


「か…香里奈っっ?!」


「香歩…助…けてっっ。」


香里奈の腕を引いても、びくともしない…

香里奈が自分の意志で立ち上がったわけではない事が分かった…

香里奈は、顔を【黒い靄】の方に向けながらも、目線だけは私に向けて助けを求めていたから…


「香里奈!!香里奈っっ!!!」


どんなに腕を引いても、香里奈の体は黒い靄に向かって歩いて行く。

斉藤刑事は、座り込んだまま。
もう、どうにも出来そうにない…。

そう思った私は、呼吸を荒くしながら助けを呼んだ。




「長田さん!!助けてぇーーーーっっ!!!」