視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~


車を15分程走らせた後、斉藤さんは香里奈の自宅前に停車させた。

私は、車がちゃんと止まる前にドアを開けて車外に飛び出す。

後ろから斉藤刑事の怒鳴り声が聞こえてきたけれど、それを気にしていられる余裕はなかった。

一度チャイムを鳴らしてはみたものの、中からの返事がくるのを待たず玄関のドアノブに手を掛ける。

扉はすんなり開き身を滑り込ませると、その目の前には驚いた顔をした香里奈のお母さんが立っていたんだ。


「えっ?香歩ちゃんどうしたの?」


「おばさん!香里奈は?!香里奈はどこ?!」


叫ぶ私の背後から斉藤刑事と長田さんが近付いてきて、
『落ち着いて話をしなさい。』
と、私の肩に手を置いて咎めた。