視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~



「大輔は失踪前、私に【黒っぽい物】が見えると言っていました。それは長田さんにも以前お話ししたと思います。」


「ああ、そうだったね。」


「だけど…それしか覚えてないんです。大輔と話した事…。」


「しかし、この手帳には他の事も書かれているね?それは大輔君と話したからじゃないのかい?」


「…多分、そうです。」


「多分って…。」


「本当に覚えてないんです。【黒っぽい物】が近付いて来るという事も、【赤い目】の事も。記憶が抜けたかの様で…自分自身、気持ちが悪いんです…。」


「………。」


長田さんと斉藤刑事は二人で一度顔を見合わせて、顎に手を添えながら何かを考えている様だった。