視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~



顔を両手で覆い隠しながらうずくまる。

階下から階段を駆け上がる音。
私の名を呼びながら、お母さんと長田さん達が駆け寄って来るのが分かった。

安心する気持ちはあるはずなのに、私は顔を上げられずにいた。


「香歩?!どうしたの?!」
「香歩さん?!」


「部屋が…部屋が…血だらけ…なの。」


「何を言ってるの?何もなっていないわよ?」


「……え?」


お母さんのその言葉に、ゆっくりと顔から手を離して周りを見渡す。



そこには、いつもと変わらない自分の部屋。



さっきの光景が嘘の様に…。