視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~



「あの男は、セツを遊郭に入れろと強要してきた。それなら借金は直ぐに返しきると…。だか、セツはまだ18歳にも満たなくて、しかも俺という夫がいる。どれを取っても法に反する事ばかりだったのに…。両親は銀蔵の申し出に同意し、セツは遊郭に連れて行かれたんだっっ。”月姫”などという源氏名まで付けられて…。」


「遊郭に…私が…?月姫…?」


「一度遊郭に入ると、通常は借金が終わるまで出られない。だが、セツを警察に見付かるわけにはいかないと、月に何度か帰ってくる事が出来た。…その時の私の気持ちが分かるかっ?!!」


栄の悲痛な叫び声に私は胸を痛めた。
今の私には、まだ記憶はない。
けど、自分の愛する人が汚されている事を思うと、まるで他人事の様だけれど何も言えなかったんだ。