視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~


その日の午後。

ようやく落ち着いた私を大輔は、
『気分転換するかっっ!』
と言って、近くの高台に連れ出した。

日影になったベンチに大輔と二人で腰掛けた。
風が良く通り、私の髪を揺らす。
少し離れた場所には、色とりどりの花が植えられていた。

何も話さず、その花をただ眺めていたけれど、私の心は少し軽くなった気がしたんだ。


「…大輔。」


「んー?」


「…ありがとう。」


私のその言葉に、大輔は何も答えなかった。
その代わりに、私の頭を優しく撫でてくれた…。


このまま、香里奈も無事に帰って来て、
何事もなかったかの様に…
幸せにすごせたらいいな…


と、そう願った…










そんな願いは、

叶うはずはないんだと、

知りもせずに…