視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~


署内に入り、私は長田さんの背中を見ながら足を進めた。

3階に登り、”取調室”と書かれた何室かある内の一室の戸を、長田さんは躊躇する事なく開ける。

その室内には、香里奈の家で一度目にした人物が見えた。
白衣を羽織った男性が、そこに居たんだ。


「神崎…何でお前がここに居るんだ。」


長田さんは”神崎”という男性に、困惑気味に問いかけた。


「長田さん。上から、事情聴取と同時にポリグラフ検査をしろとの伝達があったんだ。僕自身、それを所望していたしね?…斉藤の件があるから。」


長田さんは表情を曇らせて、
『…そうか。』
とだけ言ったんだ。


「長田さん。ポリグラフって、何ですか?」


「ああ…。異なる事だが…”嘘発見器”と言ったら分かりやすいかな?」


「嘘発見器…ですか?」


「君の証言を確認する為なんだろうが…。大丈夫だ。君は、聞かれたままを素直に応えてくれればいい。」