視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~


リビングに戻ってきたお母さんに、冷却剤をおでこに貼られた。

お母さんは、
『この子は子供の頃からよく熱を出すわね。』
と、半ば呆れながらそう言った。

そのお母さんの言葉に大輔は、
『そうそう。特に知恵熱とか!ぽやーっとしてるくせに、バカな事ばかり考えすぎなんだよ。』
と、補う様に言ったんだ。


「そうだったっけ?」


と私がそう言うと、お母さんは立ち上がって、
『あら。忘れたの?本当よ。』
と言いながら、リビングにある本棚からアルバムを取りだし、開いて見せた。


「ほらー。真っ赤な顔してる写真ばかりじゃない。肺炎にかかった時は本当に心配したのよ?これ、入院中の写真じゃない。」


と、お母さんはアルバムの中の1枚を指差した。

写真には、病院のベッドの上でパジャマを着ている4、5歳の女の子。

だけど…


「ねぇ?お母さん。この写真に写ってる女の子…誰?」


いくら10年前だからとはいえ、この写真に写ってる女の子は…

私ではなかったんだから…