長田さんは何度か頷きながら、
『やはり、そうか…。』
と呟きながら、上着の内ポケットから手帳を取り出した。
「先に私の話を聞いてくれるかい?」
と、長田さんは私の方を見て遠慮がちに聞いた。
「はい。」
「私には、香歩さん。君の事もあまり記憶にない。なぜ、私と斉藤が君を監視していたのか、なぜ、村井香里奈さんの家に同行する事になったのかも。」
「…そんな…。それじゃあ、大輔の事は…。」
私の問い掛けに、長田さんは首を横に振り、
『何も。何一つ覚えてはいない。』
と、そう言ったんだ…。
「香歩さんは、何か覚えているのかい?」
「…全部。長田さんとの事も、大輔の事も、勿論、香里奈の事も全部覚えてます。」
「…そうか。…それは良かった。」
と長田さんは呟いて、安心したのか私には優しい笑顔を向けてくれたんだ。

