視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~


長田さんは一度腰を上げて座り直し、私と大輔は机を隔てた対面側にあるパイプ椅子に腰を下ろした。

それを見た長田さんは、
『まず先に…』
と、話し出したんだ。


「松原大輔君。私と君は『初めまして』で、合ってるかな?」


「は…はいっっ!!そうでありますっ!!」


大輔、緊張しすぎ…
普通に答えればいいのに…


「それから、香歩さん。」


「はい。」


「私と君は、”昨日”が『初めまして』かい?」


その長田さんの言葉に、私は驚愕した。
長田さんは、私との事は全部覚えていてくれているんだと、勝手に解釈して安心していたからだ。


どこまで覚えていてくれてるの?


中々答えない私に、
『香歩さん?』
と、長田さんは私の名を呼んだ。

私は長田さんの方に強い眼差しを向けて、
『違いますっ。』
と、ハッキリとした声で答えた。