急いで体育館を出ようとした
「龍輝!」
外で誰かがそう呼んでる
本人の声がする
こっちに来る
どうしよう
今は会いたくない
「こっち」
いきなり腕を掴まれて引っ張られる
「でも先輩だとは思わなかったわ」
連れ込まれた放送室のドアが閉まると同時に体育館に人が入ってきた
「俺はてっきり柊だと思ってた」
「それは…ねぇよ」
龍輝の言葉が胸に突き刺さる
「やっぱりね…」
「何が?」
引っ張ってくれた人が椅子に座ってこっちを見ている
「何でもない
ありがとう
助かった」
あたしは精いっぱいの笑顔を作って言った


