「謝んないでよ、ばーか」
最後まで猫かぶったまま、奏太と話したくない。
いつもより声のトーンが低いあたしをみて奏太は目を丸くする。
「あたし、絶対諦めないから…」
諦めてなんか
やんない。
だって、
あんなそれ奏太見てるのつらい……
「ごめん」
奏太はまた謝る。
なんで、
また笑って呼んでよ。
エリカって…
「帰る……」
泣くのを必死で堪えて、一言その場に残してあたしは帰った。
しばらく歩いてから速度を緩めてケータイを手にとってボタンを押した。
この前聞いといて良かった…
『ーはい?なに?どしたのエリカちゃん』
「あ、もしもし?急に電話してごめんね。麻衣ちゃん」
ぐ、とケータイを持つ手に力を込めた。
「ちづるちゃんの番号教えてくれないかな?ーーーー」

![無題: 小野寺久子より [修正中]](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.763/img/book/genre6.png)
