あたしはなにも言えず、ただ奏太の背中を見つめて歩き続けた。
人混みの中で歩いていたからか、すれ違う人と肩がぶつかってしまった。
……あ、
ぶつかった人は、なんとゆーか…チ、チンピラ…?
なんかよくわかんないけど、めちゃくちゃ怖いんですけどっ!!!
ギロリと睨まれるあたし。
やばい…………
「すっ、すみませんでしたッ!」
と、素早く頭を下げ、奏太の背中をダッシュで追いかけた。
「てめぇ、なにやってくれてんだコラぁぁッ!」
……って、言われるかと思った……
心臓に悪いよ…。
「ぶはっ」
いつの間にか隣で歩いていた奏太が吹き出す。
……え?
「………?…な、に?」
「…いや……」
とか、言いながらも奏太は喉の奥でクツクツと笑っている。
え、怖いこの人。
…なんなの……?
「お前って、ほんとドジな」
奏太が疑問の表情を浮かべるあたしに笑って言った。
…ほら………また……
こんな顔、
初めて見る。

![無題: 小野寺久子より [修正中]](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.778/img/book/genre6.png)
