エリカside
「ねぇねぇ?俺らと遊びに行かない?」
あたしの後ろで、軽ーい声がした。
どうせ、ナンパでしょ……
フン、と小さく鼻で笑って、歩き続ける。
「ねぇってばー?」
「うるっさいなッ!あんたらに付き合ってる暇はないっつの!」…って言いたかったけど、めんどくさくなるのはごめんだ。
必死で苛立つ感情をおしこめる。
「おーい?シカトはねぇだろ?」
しつこいな……
おまけに手掴んできたんだけど。
あぁ、もう我慢の限界。
「ちょっと「ごめん。エリカ…遅れた」」
あたしが男に掴みかかるのを遮るかのように、誰かがあたしの肩を掴んだ。
クラスメイトの、小倉奏太…だっけ?
「チッ、なんだ…男いんのかよ」
そう言ってあたしから離れて歩き去って行く男。
はー…良かった。
「エリカ……」
急に自分の名前を呼ばれて、少しどきりとしてしまった。
小倉奏太を見上げると笑ってこう言ったんだ。
「名前、あってたっけ?」
それがあたしの恋の始まりだった。

![無題: 小野寺久子より [修正中]](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.781/img/book/genre6.png)
