「上原」
少し掠れた声であたしの名前を呼ぶ三木くん。
「俺さ、上原がまだ奏太の事気にしてても………」
そう言って。
またいつものように、
優しく、
微笑むの。
「好きだよ」
あたしの喉がぐっ、と音を立てる。
涙腺が、
ゆるむ。
わかってるんだね、三木くんは。
あたし、ダメ人間だから…
まだ、奏太の事気にしてるの、
気づいてそう言ってるんだね。
なのに、三木くんの「好きだよ」なんて言葉、もったいなくてもらえない。
「…っ」
泣くな。
そう自分に言い聞かせて、涙を堪えながら俯いた。
「泣くなよ」
ふ、と笑いながら優しく言う三木くんがあたしの頭を撫でる。
「泣いて、…ないよ」
笑おう。
この人の前では、笑わないと。
それと、あたしも伝えたいんだ。
「あたしも、好きだよ」
笑って伝えるんだ。

![無題: 小野寺久子より [修正中]](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.781/img/book/genre6.png)
