そう言う三木くんが腕を引っ張る。
その力に振りほどこうとしても無理だと理解させられた。
あたしを引っ張ったまま、みんながいる部屋から少し離れた、誰もいない部屋に連れていかれた。
え………?
部屋の中は暗くて、三木くんの顔がよく見えない。
ぱたん、と閉まる部屋のドア。
あたしと三木くんの息づかいだけが聞こえる。
「上原、ごめん。今、こんな事言うのダメだってわかってるけど…」
そこで言葉を詰まらせる三木くん。
まったく思考が回らず、ただ声を聞く事しかできないあたし。
涙もすっかり引っ込んで、端から見ればマヌケな顔だろう。
「今、上原…弱ってる時だからっ……ごめんッ」
な、にを
言っているの?
なにを
言おうとしているの?
「これ以上、上原の…………そーゆー顔見んのつらいんだよっ」
そう言って、暗闇の中で抱きしめらた。
背の高い三木くんに抱きしめられると、あたしの顔の位置は肩まで達しない。
「みきく……」
「だから…っ、俺が上原を笑わす。…どんな時でも笑わすから……」

![無題: 小野寺久子より [修正中]](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.781/img/book/genre6.png)
