「…っ」
なにも、言えなかった。
声が、出てこなかった。
奏太になにも言えなくなったあたしは、鼻の奥が痛くなるのを我慢しながらその場から
逃げた。
見てたのなら、言ってほしかった。
なんで高弥と帰ってんだ?って。
俺と帰ろう…って。
ぶつかってきて欲しかった。
なんで今になって…っ
早足でカラオケ店を走り回るあたしに、どん、と音を立てながら感じる衝撃。
「…っ、すいませ……__…」
顔をあげると、鼻の奥がさらに痛くなる。それを平気な顔で我慢するあたし。
やばい、泣きそう。
「上原、どうした?」
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