ー数十年前ー
「泥棒! 泥棒が出たぞー!」
果物屋の男が、幼い少年少女に向かって叫んだ。
「また、あの子達ね…」
「きっと、そうだわ」
近くにいたおばさんたちが話していた。
「お帰りーお兄ちゃんたちー」
「パンにオレンジにピーチか……うん。上出来、上出来」
リーダーぽい少年が声をあげた。
「パンだ! 初めてみたよー。凄いね、さすがリク兄!」
「おいらにかかればこんなもんすぐだぞ。もう少ししたら、トーヤもこんなになれるぞ!」
リクは、トーヤの頭に手を乗せた。
「ホント!?」
「ああ。きっとな」
彼らは、父も母がいない少年少女で、生きるために人から物を盗んでは食べていた。