「あー。疲れたー」
一人の男がダラダラ歩きながら言った。
「休憩。休憩と!」
男が座り込み歩くのをやめる。
「なに言ってるんだい。お前さん、さっきもそんなこと言ったじゃないかい」
「メンドいババアだなーって、いてて!……な、何すんだよ!」
ババア…と言われた老婆が杖を用いて小さい声で呪文を唱えた。
「…いい加減にせい!」
「わ、悪かったって! ば、ばあちゃん」
「ふん。口の悪さはお前の父親にだな」
老婆は、唱えていた呪文を止めて小さく笑った。
「親父のことは出すなよ。俺はあいつー親父が嫌いってしってんだろ?」
「ああ。知っておる。じゃが、お前さんは父親のことを知る必要があるのではないか?」
「まあな。だが、親父は死んでる。もう、記憶なんて戻ってこねーんだよ」
男は下を向き「だから…」と言いかけた。
「この世界には、お前さん以外にも記憶がない者がいる」
「……で、そいつらに会えと?」
「その通りじゃ、お前には必要じゃないのか?」
老婆は、目を瞑り言った。
「何を?」
「…仲間じゃ」
「は? 仲間?」
「そうじゃ。お前さんは必要なんじゃよ」
……………………
「運命なんて切り裂く…仲間がな」
老婆は、そういい終えると、薄くなりだし消えてしまった。
「……退けない…運命」
「俺には、ある…」
「ババアめ、全部知っていたのかよ」
「……いいぜ…探し出してやる」
「どんな運命も乗り越えられる…………」
「仲間ってやつをな」
男は、言い終えるとふらふらなりながら立ち上がり、ゆっくり歩き出した。