いつから変わった?

そんなの、もう、どうでもいい。








季節は春、俺は高校三年生になった。
ド田舎の親戚の家で、俺達三つ子は暮らしている。

本当はアイツらと離れて暮らしたかったが、そんな我が侭なんて言えない。

「……どうせあと一年だ」

あと一年過ぎれば、俺は東京の大学に行くんだ。アイツらから離れて、一人静かに暮らす予定だし。


「あら、榎月くんおはよう。顔は洗った?」

「あ、おはようございます、麻紀(まき)さん。はい、洗いました」

エプロンで手を拭きながら歩いてきた麻紀さん。


麻紀さんは俺の母の兄の奥さんで、今、お世話になっている。

小さく会釈をすると、麻紀さんは微笑んで、忙しそうに台所に走って行った。


すると、奥から寝癖を付けた啓示(けいじ)叔父さんが起きてきた。


「やあ、おはよう榎月くん」


叔父さんはニッコリと笑って、俺の肩をポンと叩いてから居間に。
お味噌汁の香りにつられて、俺も居間に行く。


居間に来ると、畳の上にあるテーブルには、叔父さんと麻紀さんと俺の分しかないのが分かった。


きっと美月は生徒会で朝早くて、葉月は昨日から帰ってないから、きっとまたどこかの不良とでも遊んでいるんだろう。



顔も性格も、僕らは全く違っていて、まるで兄妹じゃない、ただの同じ屋根の下で暮らしている、同居人みたいだ。



「いただきます」


手を合わせてお味噌汁を啜れば、胸がジワリと暖かくなった。


「榎月くん、今日は遅くなるかい?」


叔父さんがいつもの様にそう言い、玉子焼きを口に放り込む。


俺は壁のカレンダーを見てから、小さく頷いた。

「はい、今日もバイトです」


大学になった時の為に、俺はほとんど毎日バイト漬けだ。



叔父さんは「……そうか」と、少し寂しそうに呟くだけで、他には何も聞いてこなかった。