暑い暑い、夏の日、俺達は産まれてきた。
「カヅキ」
「は、はい!」
「ミヅキ」
「はぁーい」
「ハヅキ」
「はいはいはーいっ」
お母さんの真っ白な手と、服の洗剤の匂い、柔らかな身体が俺達は大好きだった。
「ふふ――」
小さく微笑む度に出来る笑窪が、大好きだった。
「ねぇ、僕達ってさ、特別なのかな」
家の近くにある小さな公園の真ん中、そこに大きな木が一つ、生えている。
いつもの様に、そこに集まって遊んでいた僕らは背中を合わせて座った。
「いきなりどうしたの? カヅキ」
三つ子の中で唯一女の子のミヅキが、母に編み込まれた髪の毛を揺らし、小首を傾げた。
それに倣って、一番下のハヅキがニヤニヤして僕の肩を叩いてきた。
「――いたッ なにするんだよハヅキ」
「いーや? べっつにぃ。ただ、いきなり真面目な顔して当たり前な事言ってるから」
そう言って「にっししー」と笑ったハヅキと呆れながらも吹き出したミヅキと声を揃えて笑った。
僕達は、確かに兄妹だった。
「そうだね、母さんも、そう言ってるんだもんね」
そう―――その日までは確かに、兄妹だったんだ。