椅子しかない殺風景な部屋は、今日もこの先も変わらないであろう。


このまま誰に気付かれぬ事なく、無機質に朽ちてゆく。
同じ様に、私も静かに逝きたい…それだけが願いだった。


と、無音の世界を壊す様に、ドアが壊れるかと思う程のノック音が響く。
一瞬 身体が震えたが、すぐに心の波が引いていった。
私は何年かぶりに部屋を出ると、もう二度と開ける事は無いだろうと思っていたドアの前に立つ。


「誰だか知らんが、こんな所に何の用だ?」

「うるさかった?寝てるかと思って。王の使いで来ました」

「…王の?約束の時まで大分ある。用など無いはずだ」

男は小さく息を吐き捨てる。
「何でもいいけど、ここ開けてくれない?これじゃ、まともに話も出来ないし」

「開けるつもりは無い。用ならそこで言え」

「あんたを殺しに来ました」

「バカ正直な…。殺せない事は承知のはずだが?」

「まぁね。取り敢えず試してみて、駄目なら次の命令を実行するまでだから、ここ開けてくれない?」


これ以上話しても無駄か…。
ドアノブに手を掛けると、扉はぎこちない音を立てて、ゆっくりと開いた。