数珠がポオッと、淡い光を放ち始める。

「時間がきたみたい」

俺は抱き締めた腕に、更に力を込める。

「最後は笑って別れよう。ね?」

抱き締めた腕を解き、果穂と向き合う。
確かに笑顔だったけど、果穂の両目からはポロポロと涙が溢れていた。
その顔を見て、俺も覚悟を決めた。
決めると同時に、視界がボヤけて何も見えなくなる。

「泣かないでよ」
「そっちこそ」
お互いに顔をクシャクシャにしながら、泣いてるのか笑ってるのか分からない表情で向かい合う。

数珠は光を増し、空に向かって一筋の道を浮き上がらせる。

笑え。
笑え。
果穂が安心して逝ける様に。
精一杯の笑顔を作るんだ。


「じゃあ、行くね」
「分かった」

「もし・・・」
「ん?」
「もし来世でまた会えたら、もう一度恋しようね」
「どこにいても絶対に探し出すよ」

「またね」
「また」