「果穂・・・果穂っ!!」

境内を奥へと進みながら、最愛の人の名を呼ぶ。
声は虚しく静寂に絡め取られ、何事もなかったかの様に消えていく。

場所を間違えたのか?
いや、違う。ここしかない。
ここしか考えられない。

「・・・果穂」そう呟いた時だった。
ほんの数メートル先に淡い光が灯った。その光は次第に強くなり、やがて白い人型になった。
「果穂!!」
どんな形になろうが、俺にはそれが果穂だと分かった。

「私が霊媒になってあげるわ」
息を切らしながら歩いてきた瑠衣が、ゆっくりと人型へと向かう。
「そのままでは不便でしょ。私は霊媒体質だから、少しだけ貸してあげる」
瑠衣がそう告げると、光が瑠衣に重なり一体化した。

俯いたままゆっくりと振り返る瑠衣。
そして・・・


「雅治君」
「る、瑠衣か?」
「久しぶり」

間違いなく果穂だった。
あんなに会いたかったのに言葉が見付からない。

「あのね」
「うん」
「雅治君をここに呼んだのは私なんだ」