気圧される俺の背後から、淡々とした瑠衣の声が聞こえてきた。
「身長は約1メートル75センチ。細身。髪は・・・長髪まではいかないけど、男性にしては長い」
瑠衣の言葉に、女性の表情が一気に凍り付く。
「服装は、Tシャツにジーンズ。Tシャツには、風神と書いてある。あと、右耳にピアス・・・」
「出て行って・・・誰に頼まれたのか知らないけど、出て行って!!私に関わらないで!!」
小刻みに震えながら、女性は絶叫する。
「で、でも・・・そのままだと──」
「雅治、帰ろう」
瑠衣は俺の手を掴むと、自動ドアの方向にスタスタと歩き始めた。
「瑠衣・・・」
「いいから、早く出るわよ」
俺は瑠衣に引きずられる様に店を出た。
「あれ、本当にいいのか?」
瑠衣が険しい表情で俺を見返す。
「何かおかしいと思わない?」
「何が?」
「だって、あの様子見た?明らかに、悪霊と顔見知りよ。それに、地縛霊であるハズの悪霊が、真っ昼間から人に憑いてるし」
「まあ、確かに」
「雅治は気付いた?
あの悪霊、右手の手首から先が無かったでしょ」


