「どのような御用件ですか?」
「え・・・あ、あの・・・」
当然の様に何も考えていない。頬を汗が滝の様に流れ落ちる。

「御用件は?」
女性は冷めた表情で、再度問い掛けてくる。更に焦る俺の背中に、瑠衣のスマートフォンが突き刺さった。その反動で、口から言葉が飛び出した。

「身体の調子はいかがですか?」

意味不明な受け答えに、真ん中に座っている別の女性店員がこちらを見る。当然、正面に座る女性は目が点になっている。

「お客様、御用件は──」
「あの、頭痛がするとか、身体がダルいとか、体調が悪くないですか?」
無表情だった女性が、大きく目を見開く。その態度は、明らかに心当たりがありそうだ。

俺は思い切って、事実を口にする。
「貴女の後ろに男の人がいます」
「はあ?」
客ではないと分かったからか、女性の態度と口調が明らかに変わる。

「バッカじゃないの!!」
顔を真っ赤にして、感情もあらわに怒声を浴びせてくる。
「バッカじゃないの!!そんな事があるわけないでしょ!!」