黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~


「死刑──!!」

15分遅れた俺に、瑠衣が立てた親指を地面に向ける。現実的に、遅刻せずにここまて来るなんてムリだったのだが、抗議するだけムダなので止める。

「で、線路向こうのトンネルに行くのよね?」
「そう。危なそうにないし、そもそも近い」
「まあ・・・ね。昨日のよりは、どこもマシだけど」
瑠衣が苦笑いする。

「じゃあ、早速行くぞ」
「了解」
2人とも自転車なので、そのトンネルまで10分もあれば到着する。


自転車に跨がり、ペダルを踏み込もうとした時だった。視界に赤い浮遊物が飛び込んできた。

「ちょっと雅治、早く進みなさいよ!!」
「あ、あれ・・・」
俺が指を差す方向に、瑠衣が視線を移す。
「何あれ・・・悪霊?」

駅に入ろうとする女性の背後を、赤色の霊がヒタヒタと追い掛けている。見たところ男性の霊だろう。

「どう思う?」
「どう・・・って、悪霊に取り憑かれてる女性でしょうね。って、まさかアンタ、余計なコトしようとしてんじゃないでしょうね?」
「・・・見過ごす訳にもいかないだろ」

「ハア・・・」と大きく溜め息を吐くと、自転車を道路脇に停め、瑠衣は駅に向かって歩き始めた。
「ほら早く。見失うじゃない!!」